保有技術
中でも、炭素工具鋼(SK鋼)や合金鋼(SKS鋼)をはじめとする特殊鋼の熱処理技術は、手打ち鎌の製造当時から脈々と受け継いでいる焼入れ技術に、近代的な熱処理技術を付加した、他社には見られない独自の熱処理技術を有し、鋼材の持つ耐衝撃性や粘りを可能な限り発揮させています。
長尺鋼材の無歪熱処理技術
熱処理は、焼入れ後にプレステンパを行い歪を矯正する過程で微小クラックが発生しやすいといった欠点を有しております。これを避けるため、1mを超えるような長尺物の刃物を製造するにあたっては、焼入れ鋼帯と称される熱処理を施した鋼板を購入し、プレス等で抜き加工した後、刃付けをして製品にする方法が多く採用されています。
源平刃物工場では、焼入れの過程でほとんど無歪の状態で処理し、さらに内部応力が生じない方法で矯正しながらテンパする熱処理を実現しております。
これにより幅30~100mm、長さ2m以上の薄板刃物鋼の熱処理をほぼ無歪の状態で加工でき、既成の焼入れ鋼帯では実現できない、繊細な粘りや耐摩耗性を有した高度な刃物の製造を可能にしています。
オガミ刃の製造技術
二枚の刃物が交差して物を切断するバカン刃では、ハサミに見られる二枚の刃が支点を中心にして、接点が絡みつくように回転をするオガミ形状を有する刃が理想とされています。
これを実現するため打撃による整形や、研磨過程でオガミ形状をつける方法がありますが、耐久性やコストの面で多々課題を有しています。
源平刃物工場では、通常の抜き加工した薄板鋼板を、熱処理過程において独自の工程を加えることにより、オガミ形状に仕上げることができ、なおかつ、内部応力が残留しないという方法を確立しております。
このオガミ刃で刈り込むと切り口が滑らかに仕上がるため、刈り取った葉も刈り残した葉も品質が問われる茶摘機をはじめ、高級なヘッジトリマに採用されています。
冷間鍛造による刃付け技術
「鉄は熱いうちに打て」のことわざにあるように、鋼を鍛える技術として古来より日本刀に代表される刃物に施されてきました。日本刀などの場合は熱間鍛造ですが、鋼材を常温環境下で、強烈な圧力をかけて鋼板の厚さを絞ったのち研磨仕上げして刃物にする方法があります(冷間鍛造)。
源平刃物工場では、従来から培ってきた金型技術の粋を集めたプレス加工による冷間鍛造技術を駆使し、少しでも日本刀に近い組織の刃を得るべく、非常に緻密な組織の刃先を有した刃物の製造を実現しております。またこの技術は、任意の自由な刃形状を作り出せる可能性を有しています。
鍛造により刃付けをしたバリカン刃
精密レーザ加工機による薄板加工
トルンプ TruLaser3030
レーザ加工機で切断した自転車
2003年に国内の刃物製造メーカでは初めて、超高性能精密レーザ加工機「トルンプ3050」を導入し、レーザ加工技術を磨いてまいりました。さらに2014年に「トルンプTruLaser3030」に更新。
最新のレーザ加工機により、従来では実現できなかった高速度で極めて複雑な形状を有した刃物の製造を実現し、お客様の要望にお応えしています。
研究開発
源平刃物工場では独自に開発した「摩耗試験機」や「衝撃強度試験機」を使用し、高品質の製品を製造していることを常時確認しております。
また、バリカン刃の切断メカニズムを解明するために高速度カメラを導入し、新たな形状の刃物を試作するときや、既製の刃物を改良するときなど、切断物の動きを確認しながら切れ具合を検証し、その結果を設計へフィードバックすることで、より優れた刃物の開発を目指しています。
高速度カメラによる切断メカニズムの分析
商品化されている技術
商品化技術 1(弧状形状ブレード)
茶葉の収穫用に用いられている、弧状の形をしたバリカン刃の製造技術を応用し、通常のヘッジトリマに装着できるように開発したものです。
これにより、玉つくりといった曲線形状に仕上げたい剪定作業を行う場合でも、専門家はもとより一般の方でも容易に、かつ効率的に仕上げることができます。
2012年「みのもんたの朝ズバッ!」(TBSテレビ)で、弧状形状のブレードが紹介されました。番組では庭木を実際に刈りこむ作業も紹介され反響を呼びました。
商品化技術 2(曲線歯ブレード)
弊社の保有技術である「冷間鍛造技術」を駆使して、1枚1枚の歯を剪定鋏のように曲線の形状で仕上げたものです。
これを装着したヘッジトリマで剪定を行うと、切断面が滑らかに、また奇麗になるばかりでなく、ウバメガシなどの太くて硬い樹枝の剪定も容易に行うことができます。
曲線歯ブレードを装着した電動式植木バリカン
また、芝生バリカンを曲線歯にすると(左下の写真)、芝生以外の庭木の剪定においてもロックすることなく刈込みができ、さらに従来形状の刃物に比べ、刈込み時の使用電力量を15%以上も低減できることを確認しています。
芝生バリカン仕様の曲線歯
商品化技術 3(替刃簡易交換方式)
バリカンの刃を交換するには、ヘッド部を分解しなければいけないのが一般的です。
弊社は、ヘッド部の外で駆動部品と刃を勘合させ、刃を固定しているボルトを取り外せば、簡単に刃の交換ができるシステムを開発し実用化しました。
現在では外すボルトを1本に限定し、刃をスライドさせて取替えできる構造に改良したことで、刃の交換に要する時間をわずか2分に短縮できました。
安心トリマーくん mini
西日本高速道路エンジニアリング四国(株)と共同で開発したもので、四国をはじめ、東北、新潟、北陸管内の高速道路で使用中。
NETIS登録 SK-80016-V
商品化技術 4(軽量化対策ブレード)
ユーザの方にとって、ヘッジトリマの重量は刈込みの作業性を左右します。
弊社は、切れ味を低下させることなく、ブレードに必要な剛性を保持しながら、軽量化することに取り組んでいます。
ことで軽量化したブレード
下の写真は、鋼材の特性をフルに活用し、極限の軽量化を目指した開発中の曲線歯ブレードです。
開発中の軽量化仕様の曲線歯ブレード
商品化技術品 5(鋸目歯)
刃の裏側に凹凸の歯型を刻み込むことで、側面の刃に鋸目が現れるように考案した刃です。
笹竹や篠竹など、滑りやすい木々を鋸目でしっかり捉まえ、刃付けされた側面刃で確実に切断します。
鋸目の歯と標準の歯が合うように組合せているので、切れ味は軽く、また、刃研ぎをしても、鋸目が消えないのが特長です。